児童生徒の自殺者数が、2020年に急増して以降、現在も高止まりの状況が続けています。
こうした背景を踏まえ、本コラムでは教育機関向けの「TALKの原則」について、前編・後編に分けて解説しています。
本コラムを読むことで、いざという時にも落ち着いて対応できるようになることを目指します。
なお、本テーマは非常に重い内容を含みます。
できる限り配慮ある表現を心がけていますが、疲れている方は、無理をせず、ご自身のペースでゆっくりとお読みください。
\ 前編は、Tell・Askを解説しています /
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内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
5 Listen(耳を傾ける)
絶望的な気持ちを傾聴します。話をそらしたり、叱責や助言などをしたりせずに訴えに耳を傾けます。
例えば、
先生もう限界だと感じているのね。そんな大変な状況のなか、これまでよく頑張ってきたね
先生そんな大変なことがあって、悩んでいるうちに、死ぬしかないと思うようになったのね
このように、絶望的な気持ちを否定せず、そのまま受け止めて言葉を返していきます。
Listenのポイントは、主に2つあります。
(1)正論や励ましを言わない
児童生徒から「死にたい」と言われたとき、私たちは不安を感じます。
そのようなことになってほしくないから、
「死んだらダメ」「そんなこと言わないで」と言いたくなるのは自然な反応です。
また、「どうすれば考えを変えてくれるだろう」と思い、
正論(例:「死ぬほどの問題じゃない」)や
励まし(例:「大丈夫だよ。そのうちどうにかなるよ」)を言いたくなることもあるでしょう。
しかし、こうした対応は多くの場合、状況を悪化させます。
なぜなら、
死にたいと打ち明けた人は
その気持ちを否定されると、自分を否定されたように感じる
死にたいと打ち明けた人は
その気持ちを否定されると
自分を否定されたように感じる

では、どのように対応すればよいのでしょうか。
私たちは「死ぬこと」を受け入れることはできませんが、
「死にたいほどつらい気持ち」を受け止めることはできるので、
先生死にたいほどつらい気持ちなのね
先生死にたい…それくらいつらい気持ちなのね
と、共感を示します。
この「死にたいほどつらい」という表現は、本人(児童生徒)にも違和感を持たれにくい言葉です。
「死にたい」は「死にたいほどつらい」に変換して、共感する
(2)背景にある出来事を聴く
次のようなやり取りは、現場で起こりがちなパターンです。
児童生徒つらいです
先生つらいのね
児童生徒……もう生きていられない
先生それほど、つらいのね
児童生徒……もう死にます!
先生ちょっと、落ち着いて!
児童生徒それしかない
先生待って、待って!
このように、児童生徒の言葉がエスカレートし、先生もパニックに陥ってしまうことがあります。
気持ちの言葉だけでやり取りを続けていると、
本人は「もっと分かってもらいたい」と感じ、言葉を強めていくことがあります。
このような状況を回避し、落ち着いて対応するためには、背景にある出来事を聴くことが重要です。
先生その気持ちについて、もう少し聞かせてほしいんだけど、どんなことがあったの?
先生何があったのか、話せる範囲でいいので聞かせてもらえますか
ポイントは、「何」「どんなこと」といった問い方を用いることです。
「なぜ」「どうして」といった問いは、相手に否定されたような印象を与える場合があります。
「なぜ死にたくなったの?」
「どうして消えてしまいたいの?」
出来事を聴き、そう思わざるを得ない状況を理解しようとする
出来事を聴き
そう思わざるを得ない状況を
理解しようとする

6 Keep safe(安全を確保する)
安全を確保します。一人で抱え込まず、連携して適切な援助を行います。
例えば、
先生こんなにつらい思いをしていることを、おうちの人にも知ってもらう必要があると思うけど、どうかな?
先生あなたのことが心配だから、私からおうちの人に配慮しながら話したいと思うんだけど、いいかな?
先生また話を聴かせてほしいから、明日も面談しませんか?
このように、チームで支援していくことへの同意を得たり、次の面談の約束につなげたりします。
Keep safeのポイントは、主に2つあります。
(1)一人で抱え込まず、組織で対応する
まずは管理職に報告し、組織としての対応を開始します。
「死なないだろう」「大丈夫だろう」といった楽観視は、絶対にNGです。
むしろ重要なのは、
「最悪の場合、何が起こり得るか」と自問する
「最悪の場合、何が起こり得るか」
と自問する
また、児童生徒から「誰にも言わないで」と言われることは少なくありません。
ここで理解しておきたいのは、
児童生徒が恐れているのは、「秘密が知られること」そのものではなく、それを知った周囲の反応である、という点です。
過剰な反応であっても、無視するような反応であっても、児童生徒は深く傷つきます。
何を恐れているのかは、本人に丁寧に確認しなければ分かりません。
その不安の中身が分かれば、それを避けるための支援を具体的に提案することができます。
例えば、
先生もし伝えたら、どんなことが起こると思う?
(恐れている反応を聞く)
先生怒られることを心配しているのね
そう思うと、言ってほしくないよね…
・・・
もし怒られないとしたら、〇〇さんがつらい思いをしていることを、知ってもらってもいいかな?
先生私から〇〇さんの気持ちをしっかりと伝えて、怒られるようなことはしていないことも説明しようと思うけど、どうかな?
(恐れている反応にならないための支援を提案する)
このように、児童生徒の気持ちに寄り添いながら、粘り強く説明していく場面も多くあります。
その際には、さまざまな選択肢の提示が含まれるかもしれません。
ただ、何よりも重要なのは、次のような誠実なメッセージです。
「あなたが心配だから、伝えさせてほしい」
「あなたが大切だから、守る方法を一緒に考えたい」
こうした姿勢を丁寧に伝えることが、支援への合意形成につながります。
\ 「誰にも言わないで」への対応のポイント /
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(2)物理的に安全を確保する
物理的に自殺の機会を減らすことは、極めて重要な支援です。
自殺のホットスポットとして知られるサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジでは、
飛び降りようとしていたところを警察官に発見され、橋から退去させられた人たちがいます。
こうした人々を対象に調査が行われた結果、
約9割の人が数年後も生存していたことが報告されています(Seiden, R. H., 1978)。
「その橋がだめなら別の場所で自殺するのではないか」と予想されがちですが、
実際には、そうしたケースは多くないことが示唆されています。
また、同橋では2014年に転落防止ネットの設置が決定され、2024年1月に完成しました。
ネットが一部設置されていた2023年には、例年の半数まで自殺者数が減っています。
この結果が示すのは、
物理的に自殺を防ぐこと自体が、大きな意味を持つ ということです。
また、自殺を考える気持ちは「一人でいるときに強まりやすい」という特徴があります。
実際、ほとんどの自殺企図は一人でいるときに行われています。
死にたい気持ちが高まっている時期には、
少なくとも一定期間、できるだけ一人にせず、物理的に安全を確保する対応が必要です。
具体的には、
- 一人で登下校させない
- 家で一人きりにしない
- 自室で長時間を過ごさせない(時々、声をかける)
- 家族の誰かが同じ部屋で就寝する 等
このように、物理的な安全を確保するためには、家庭と学校の連携が不可欠です。
死にたい気持ちがある人を、できるだけ一人にしない
死にたい気持ちがある人を
できるだけ一人にしない

7 長期休業の前後にどう対策するか
文部科学省は、次のように通知しています。
各学校において、長期休業の開始前から、アンケート調査、教育相談等を実施するとともに、一人一人に対して面談を行うなど、悩みや困難を抱える児童生徒の早期発見に努めること
文部科学省(令和7年6月30日付け)通知「児童生徒の自殺予防に係る取組について」
令和6年度の通知から、新たに「一人一人に対して面談を行う」という文言が加えられました。
すでに各学校でさまざまな取組が進められていることと思いますが、
この「一人一人との面談」を効果的に実施する一つの方法として、
当Webサイト(PSYCLA)が提供している
「教育相談 指さしシート」を活用した面談を、ぜひ検討ください。
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