【TALKの原則】保存版 死にたいほどつらい気持ちを聴くために(前編)

児童生徒の自殺者数が、2020年に急増して以降、現在も高止まりの状況が続けています。

こうした背景を踏まえ、本コラムでは教育機関向けの「TALKの原則」について、前編・後編に分けて解説します。

本コラムを読むことで、いざという時にも落ち着いて対応できるようになることを目指します

なお、本テーマは非常に重い内容を含みます。

できる限り配慮ある表現を心がけていますが、疲れている方は、無理をせず、ご自身のペースでゆっくりとお読みください。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 自殺した児童生徒が置かれていた状況

グラフを見ると、「不明」が多く、
全体の56.7%を占めています

この調査報告では、「不明」の具体例として、
「周囲から見ても普段の生活の様子と変わらず、特に悩みを抱えている様子も見られなかった。等」と示されています。

つまり、

普段の様子と変わらず、悩みを抱えている様子を見せず、亡くなる児童生徒が多い

普段の様子と変わらず
悩みを抱えている様子を見せず
亡くなる児童生徒が多い

「死にたい気持ちを周囲に話してくれたら、自殺を防ぐことができたのではないか…」

そのように考えると、

自殺を防ぐためには、つらい気持ちを打ち明けてもらうことが重要だと考えられます

そのために必要な対応の指針が「TALKの原則」です。

児童生徒から「SOSが出されない」ことを話題にする際には、

いつの間にか、SOSを出さない児童生徒に責任を帰してしまう雰囲気になりやすい点に、注意が必要です。

SOSが出されない背景には、環境側に要因がある可能性も考えられます。

また、過去に打ち明けた際に十分に寄り添ってもらえなかった経験から、

怖さや不安を感じ、言い出せない状態にあるのかもしれません。

こうした点を踏まえると、

児童生徒に対する「SOSの出し方に関する教育」とあわせて、

周囲の大人に対しても、「SOSの出してもらい方、受け止め方」に関する研修や啓発を行っていく必要があります。

近年、教育現場において自殺予防に関する教職員研修が広がっていることは、非常に意義のある動きといえます。

2 TALKの原則とは

TALKの原則は、自殺対策における基本的な対応法として、広く知られているものです。

TALK(トーク)」と読み、4つの対応の頭文字から構成されています。

ell
心配していることを言葉に出して伝える。

sk
「死にたい」と思うほどつらい気持ちの背景にあるものについて尋ねる。

isten
絶望的な気持ちを傾聴する。話をそらしたり、叱責や助言などをしたりせずに訴えに耳を傾ける。

eep safe
安全を確保する。一人で抱え込まず、連携して適切な援助を行う。

引用:文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月)」

いのちに関する場面でなければ、これらは特別な関わりではありません。

「伝える」「尋ねる」「耳を傾ける」「安全を確保する」

いずれも、先生方が日頃から児童生徒に対して行っていることです。

ところが、自殺というテーマになると、その意味合いは大きく変わります

同じ「伝える」「尋ねる」「耳を傾ける」「安全を確保する」であっても、

その一つひとつの関わりに、より丁寧で慎重な配慮が求められるためです

以下では、それぞれのポイントについて具体的に見ていきます。

3 Tell(伝える)

心配していることを、言葉に出して伝えます。

例えば、

先生

〇〇さんのことが心配です

先生

よかったら、話を聴くよ

先生

〇〇さんの力になりたいです

もし、児童生徒が「死にたい」と打ち明けてくれた場合は、

先生

話してくれて、ありがとう。よく話してくれたね

先生

話を聞いて、〇〇さんのことをとても心配しています

といったように、感謝やねぎらいの言葉を添えながら、心配している気持ちを伝えます。

Tellのポイントは、主に2つあります。

(1)主語を自分にする

(私が)あなたを心配しています」と、自分を主語にして伝えます。

家族や友だちを主語にして、「親が心配するよ」「友だちが心配するよ」と伝えることには注意が必要です。

その児童生徒にとって、家族や友だちが悩みの要因になっている可能性があるためです。

その場合、「親が心配するわけない!」と否定され、かえって心が距離が離れてしまうことがあります。

(2)言葉にして、はっきりと伝える

相手は、死にたいほどのつらさを抱えている状態にあります。

そのため、こちらの表情や態度から、ネガティブな反応は敏感に受け取る一方で、

「心配している」「大切に思っている」といったポジティブな気持ちは、言葉にしなければなかなか受け取ってもらえません

だからこそ、気持ちを言葉にして、はっきりと伝えることが重要です。

心配していることを伝えるときは、主語を自分にして、はっきりと言葉にして伝える

心配していることを伝えるときは
主語を自分にして
はっきりと言葉にして伝える

「不安でうまく伝えられないかもしれない」と感じる先生へ

むしろ、うまく言えないくらいのほうが、ちょうど良いかもしれません。

児童生徒の立場からすれば、勇気を出して深刻な思いを打ち明けたのに、

先生が落ち着いた表情で流暢に応答したら、

「えっ、そんなに大したことがない話でしたか?」と、傷ついてしまうかもしれません。

「優しく話すのが苦手だ」と感じている先生へ

その児童生徒は、先生のことを信頼しているからこそ、思いを打ち明けてくれています。

そのため、先生のいつもの声や語り方そのものが、安心感につながることがあります。

また、普段あまりやさしい話し方をしない先生ほど、

いざというときに、やさしい声をかけると、児童生徒に伝わるものが大きいのではないかと思います。

4 Ask(尋ねる)

「死にたい」と思うほどつらい気持ちの背景にあるものについて尋ねます。

例えば、

先生

こういう悩みがあると、「生きているのがつらい」と感じる人もいるけど、あなたはそう思ったことある?

先生

自分を傷つけたりして、つらい気持ちを紛らわそうとする人もいるけど、あなたにもそういうことはありますか?

このように、死にたい気持ちや自傷行為について質問します

もし、児童生徒が「生きているのがつらい」と話してくれた場合には、

先生

いつ頃から、そう感じていたの?

先生

どんなときに、その気持ちは強くなるの?

先生

そういう考えが強かったとき、実際に行動に移したことはありますか?

といったように、期間や頻度、強さに加え、自殺企図歴や手段の準備、これまでの対処方法などについて、具体的に質問していきます。

「自殺企図(じさつきと)」とは、実際に自殺を企てること、行動に移すことを指します。

また、これまでの自殺企図の経験を、「自殺企図歴(じさつきとれき)」といいます。

Askのポイントは、主に3つあります。

(1)死にたい気持ちについて率直に尋ねる

「かえって背中を押してしまうのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。

しかし、聞いたからといって人が自殺しやすくなることを明らかにした研究はいまのところ一つもなく、

むしろ専門家は、口をそろえて「質問しなければならない」と強調しています

その理由は、

自殺に関することは
質問されなければ、話しづらく
質問しなければ、分かりづらい

実際には、質問されることで本人が安心する場面も少なくありません。

それは、「これまで一人で抱えてきたことを、ようやく言葉にできる」ためです。

たとえ「そのような気持ちはない」と回答があった場合でも、

質問するという行為そのものが、「私(先生)には、そのことを話してもいいんだよ」というメッセージになります。

(2)クローズド・クエスチョンを用いる

クローズド・クエスチョン(閉ざされた質問)とは、

「はい」「いいえ」「〇〇です」など、回答の形式がある程度限定されている質問です。

自由に答えるオープン・クエスチョンと比べて、答え方が明確であり、負担が大きい状況でも応答しやすいという利点があります。

うなずくだけでも、コミュニケーションが成立する点も特徴です。

実際の関わりでは、まずはクローズド・クエスチョンで入り、徐々にオープン・クエスチョンへと広げていく流れが有効とされています

また、「なかには〇〇する人もいるけど、あなたはどうですか」といった前置き(ノーマライズ)を用いることで、

同様の経験をもつ人が他にもいることを前提とでき、言いにくい内容を言いやすくする効果が期待できます。

ノーマライズで児童生徒に寄り添う /
↓ ↓ ↓

(3)自殺企図歴や手段の準備等について尋ねる

自殺リスクをアセスメントするためには、

自殺企図歴や計画の有無、手段の準備などについて確認することが重要です。

自殺を考えた人の34%は、具体的な自殺の計画を立てており、

自殺の計画を立てた人の72%は、実際に自殺企図におよんでいた

Kessler, R. C., Borges, G., Walthers, E. E. (1999). Prevalence of National Comorbidity Survey. Arch Gen Psychiatry 56, 617-626.

自殺企図歴がある人、計画や準備がある人は、自殺リスクが高いと考えられます。

自殺リスクの詳しい質問方法は
↓ ↓ ↓

「それでも、尋ねることに不安がある」と感じる先生へ

一人で対応しようとせず、二人になることを考えてみてはどうでしょうか。

面談の途中であっても、児童生徒の了承を得て、他の教職員に同席してもらうことで、

対応に余裕が生まれ、より適切な支援につながることがあります。

先生

私が「この先生は信頼できる」と思う先生がいるんだけど、一緒に話を聴いてもらってもいいですか?

先生

私自身もよく相談している先生だから、〇〇さんの気持ちもわかってくれると思うの

なお、他の教職員を呼びに席を離れる際には、児童生徒を一人きりにしないよう、十分に配慮することが必要です。

後編は…

\ Listen・Keep safeは、後編に続きます
↓ ↓ ↓

関連書籍のご案内
もしも「死にたい」と言われたらー自殺リスクの評価と対応ー 中外医学社 松本俊彦
自殺防止の手引きー誰もが自殺防止の強力な命の門番になるためにー 金剛出版 羽藤邦利

もっと知りたい先生へのオススメの書籍

難しいテーマに真っ向から取り組んできた筆者がこれまでの経験と知識を元に書き下ろした一冊.

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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PSYCLA(サイクラ)は、臨床心理学・心理学の理論・技法を、教育現場で活用しやすい形に再構成し、わかりやすい情報としてお届けしています。

次回もどうぞお楽しみに。

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