前編では、感情に焦点を当てた「伝え返し」について解説しました。
感情を言葉にして返すことは、共感的な関係づくりの土台になります。
一方、面談や相談の場面では、感情だけでなく、「相手が何を伝えたいのか」を正確に受け取ることも大切です。
後編では、話の内容を整理して返す「伝え返し」について、学校現場での具体例を交えながら解説します。
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内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
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5 やり方②:内容を伝え返す
イメージとしては、
『つまり、こういうことを言っているんですね』
『あなたが伝えたいことは、こういうことですね』
というニュアンスで返していきます。
具体例を見てみましょう。
例1:児童生徒の葛藤
児童生徒将来なりたいものとか、行きたい高校とか、全然決まってなくて……みんなは目標を決めているのに、自分は何もなくて……
でも、何でもいいわけじゃないし……
先生自分も早く決めなきゃと思う一方で…
ちゃんと考えて決めたいとも思っているんだね…
例2:児童生徒の説明
児童生徒最初は、普通に話していたんですけど…途中から急に二人とも怒り出して……大声で言い合いになっていて……あの二人、普段は仲がいいのに……
何がきっかけだったのか、よく分からないんです……
先生仲の良い二人が急に言い合いになって…
何がきっかけだったのか、分からないんだね…
例3:保護者の相談
保護者うちの子、書くのが遅くて…家でノートを見ると、途中までしか書けていないんです……本人も「書いているうちに次へ進んでしまう」って言っていて…授業についていけるのか心配で……
それで、先生にご相談したほうがよいと思いまして……
先生ノートを書くのに時間がかかることで…授業についていけるのかとご心配されて…ご相談くださったのですね…
先生は、児童生徒や保護者の話に対して、『こういうことを言っているんですね』と、自分の理解を確かめています。
その際のポイントは、
話の重要な点をとらえ
先生自身の言葉で整理して返す
例えば、先生が「天才は努力をしている」と説明したとします。
振り返りの自由記述欄に、
ある児童生徒は、「天才は努力をしている」と、そのままの言葉を書きました。
一方で、別の児童生徒は、
「天才も、生まれつき特別なのではなく、実は努力を重ねている」
と書きました。
どちらの児童生徒のほうが、先生の話を理解していることが伝わるでしょうか。
後者の記述からは、単に言葉を覚えただけでなく、その意味を自分なりに整理して捉えていることが伝わってきます。
伝え返しでも同じです。
相手の言葉をそのまま繰り返すのではなく、重要な内容を整理し、自分の言葉で返します。
そうすることで、相手は「自分の話をきちんと理解してもらえた」と感じやすくなります。

(1)話の重要な点をとらえる
では、いったい何を伝え返せばよいのでしょうか。
次の児童生徒の例で考えてみましょう。
例4:
児童生徒部長になってから、後輩への接し方に悩んでいます…
あまり強く言いたくないんですけど、優しく言うだけだと動いてくれないんです……
でも、厳しくすると…自分が嫌だった先輩みたいになりそうで嫌なんです……
みんなが気持ちよく活動できるチームにしたいのに…どうすればいいのか分からなくて……
次の3つの先生の「伝え返し」を比べてみましょう。
例4ー1:ぴったり感 ★☆☆
先生後輩には、優しくしたいんだね
児童生徒でも、それだと動いてくれないんです……
先生は、「後輩に優しく接したい」という気持ちに注目して伝え返しています。
しかし、児童生徒が悩んでいるのは、それだけではありません。
「優しく言うだけだと動いてくれない」「厳しくすると嫌だった先輩みたいになってしまう」という葛藤が、この話の中心にあります。
例4ー2:ぴったり感 ★★☆
先生優しくするか厳しくするかで、どう接したらいいのか悩んでいるんだね
児童生徒どうすればいいのか分からなくて……
先生は、児童生徒の葛藤を整理して伝え返すことができています。
そのため、児童生徒も「そう、それで悩んでいる」と感じやすくなります。
ただし、児童生徒の話には、もう一つ大切な思いが含まれています。
それは、「みんなが気持ちよく活動できるチームにしたい」という願いです。
例4ー3:ぴったり感 ★★★
先生みんなにとってよいチームにしたいからこそ…
後輩にどう接するのがいいのか…悩んでいるんだね……
児童生徒そうなんです……!
先生は、「どう接するか」という悩みだけでなく、
その背景にある「みんなが気持ちよく活動できるチームにしたい」という思いまで含めて伝え返しています。
そのため、児童生徒は「まさにそれです!」と感じやすくなります。
伝え返しで大切なのは、
相手がもっとも伝えたいこと
わかってほしいと願っていること
をとらえる
この「ぴったり感」が高まるほど、相手は「わかってもらえた」と感じやすくなります。

(2)言葉の返し方
「伝え返し」は、聴き手が自分の理解を確かめるためのかかわりです。
ここで大切なのは、「確認ではあるけれど、質問ではない」という点です。
そのため、「本当にそう?」と確かめるように、語尾を上げて質問する形にはしません。
❌「〇〇なんだね?」
❌「〇〇ということ?」
伝え返しでは、語尾を下げながら、やわらかく返すことが基本です。
⭕️「〇〇なんだね…⤵️」
⭕️「〇〇ということ…⤵️」
コツは、語尾を少し伸ばしながら、フェードアウトするように、やわらかく返すことです。
このような「語尾を大切にする返し方」は、
『動機づけ面接』というアプローチでも重視されています。
語尾を上げて質問の形にすると、
相手は「そうかな?」「本当にそうだろうか?」と、自分の発言を改めて検討する方向に意識が向きやすくなります。
たとえば、
「今日は、なんだか甘いものが食べたい」
という発言に対して、
「甘いものが食べたい?」
と返されたら、どうでしょうか。
人によっては、『そうかな?』『変なことを言ったかな?』と、少し身構えてしまうかもしれません。
一方で、
「甘いものが食べたい…⤵️」
と、語尾を下げて返されると、
その気分をそのまま受け止めてもらえたように感じやすくなります。
「何を言うか」と同じくらい
「どのように言うか」も大切
同じ言葉であっても、語尾や言い方によって、相手に伝わる印象は大きく変わります。

(3)うまく使うためのポイント
相手が話している最中に、
「何を伝え返そうか」
と考え始めると、かえって話を十分に聴けなくなってしまうことがあります。
そのため、相手が話している間は、まず話そのものに集中して耳を傾けることが大切です。
伝え返しは、うまい言葉を返すための技術ではありません。
相手を理解しようとする姿勢を言葉で示すためのかかわりです。
まずはリラックスして、相手の話を最後まで聴くことを意識してみてください。
相手の話の「。」まで聴くくらいのつもりで、じっくりと耳を傾けてみましょう。
しっかり聴けていれば、伝え返しの言葉は自然と見えてきます。

6 練習してみよう
では、「伝え返し」の練習をしてみましょう。
正解は一つではありません。
「相手は、何を伝えたいのだろう」と考えながら、自分の言葉で返してみてください。
- 次の児童生徒の言葉に「伝え返し」をしてみましょう。
児童生徒先生に「話を聞いていない」って注意されたんですけど……
私はノートを書きながら聞いていて……でも隣の人に消しゴムを貸してって言われて……
それで少し話したら…ちょうどそのときに見られて……
【解答はこちら】
解答例:
「ちゃんと聞いていたのに…誤解されたように感じたんだね……」
「注意されたけれど…『自分としては違う』…という思いがあるんだね……」
この場面では、「先生に誤解された」という本人の受け止めが、話の中心にあります。
まずは本人が伝えたいことを伝え返すことで、「ちゃんと話をわかってもらえた」という感覚につながりやすくなります。
- 次の保護者の言葉に「伝え返し」をしてみましょう。
保護者学校では普通に過ごせているとは言うんですけど……
帰ってくると機嫌が悪くて、部屋にこもったりしていて……
前はよく名前が出ていた友だちの話もしなくなったんです…
聞いても「別に」としか言わなくて……親が気にしすぎなのかもしれませんが、少し気になって……
【解答はこちら】
解答例:
「様子が違うように感じて…何かあったのではないかと気になっているのですね……」
「お子様の様子がいつもと違って…どうしたのかと…気になっているのですね……」
この場面では、「何かあったのではないか」という保護者の気がかりが話の中心にあります。
- 次の児童生徒の言葉に「伝え返し」をしてみましょう。
児童生徒運動会のリーダーをやることになったんですけど……
自分で本当に大丈夫かなって思って……みんなの前で話すのは苦手だし、ダンスが得意というわけでもないし……
でも、断るのも申し訳ないし……せっかく任せてもらったから、がんばったほうがいいのかなとも思って……
【解答はこちら】
解答例:
「自分にできるか不安だけど…任せてもらったから…頑張りたい気持ちもあるんだね……」
「自分で大丈夫かと迷う気持ちはあるけれど…みんなの気持ちには応えたいとも思うんだね……」
この場面では、
「自分にできるだろうか」という不安と、
「任せてもらったから頑張りたい」という気持ちの間で揺れていることが、話の中心にあります。
すぐに、「やってみたら?」「自信を持ちなよ」と励ましたり助言したりするのではなく、
まずは本人の迷いや葛藤を整理して返すことが大切です。

7 うまくいかなかったときの対応
「伝え返し」に対して、相手が
「そうなんです!」
と気持ちを込めて返事したときは、こちらの理解が相手と重なっているサインです。
一方で、気をつけたいのが、
「そうなんです。でも…」
という反応です。
このときの「そうなんです」は、会話をやわらかくするためのクッション言葉として使われていることがあります。
そのため、必ずしも「そのとおりです」という意味とは限りません。
また、「そういう感じではなくて…」「というより…」などと、
相手から修正が返ってくることもあります。
しかし、それは失敗ではありません。
むしろ、相手が「本当に伝えたいこと」を教えてくれている大切な場面です。
相手の修正は、こちらの理解を深めるための貴重な情報です。
たとえ伝え返しが相手の気持ちや考えと少しずれていたとしても、落ち込むことはありません。
相手は、こちらに理解してもらおうとして、さらに言葉を重ねてくれているのです。
その姿勢に感謝しながら、もう一度耳を傾けてみましょう。
たとえば、
「詳しく聞かせてもらえますか」
「というのは……?」
などと伝え、相手から教えてもらう姿勢を持つこともできます。
「伝え返し」は、相手と一緒に理解を深めていくための対話のプロセスです。

後編のまとめ
- 「内容の伝え返し」は、相手の話の重要な点を、聴き手の言葉で整理して返すかかわりです
- 相手が伝えたいことや、分かってほしいと思っていることを的確に伝え返すことで、「わかってもらえた」「しっかり聴いてもらえた」という感覚につながります
- 「伝え返し」で重要なのは、うまい言葉を返すことではありません。相手を理解しようとし、その理解を確かめながら対話を続けていく姿勢です
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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