【授業のユニバーサルデザイン】わかる・できる・楽しいを支える「特別」ではない工夫

ユニバーサルデザイン(以下、UD)は、シャンプーやトイレ、エレベーターなど、

私たちの生活のあらゆる場面に取り入れられており、社会に欠かせない考え方となっています。

同様に、学校においても「授業のユニバーサルデザイン(以下、授業UD)」は、児童生徒の学びを支えるうえで重要な視点です

本コラムでは、授業UDが「特別なものではない」ことを整理し、その必要性について考えていきます。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 授業UDとは

ユニバーサルデザイン(Universal Design)とは、

「障害の有無にかかわらず、多くの人にとって使いやすいデザイン」を指します。

この考え方に基づくと、「授業UD」とは、

障害の有無にかかわらず、多くの児童生徒にとって学びやすい授業」であるといえるでしょう。

ここでいう「学びやすい」とは、

「わかる」「できる」「楽しい」「安心できる」「参加しやすい」「活動しやすい」

といった、さまざまな側面から捉えることができます。

このような多面的な学びやすさを踏まえると、

授業UDは特定の指導方法を指すものではないことにも留意が必要です

ユニバーサルデザインが「使う人の立場に立ったデザイン」であるのと同様に、

授業UDは「学ぶ人の立場に立った授業」であり、いわば指導の理念といえます。

<参考>
日本授業UD学会の定義と階層モデル

「授業UD」とは、

多様な子どもたちが楽しく学び合い
「わかる・できる・探究する」ことを目指す
通常学級における授業づくり

日本授業UD学会(2025)

多様な子どもたちが楽しく学び合い
「わかる・できる・探究する」ことを目指す
通常学級における授業づくり

日本授業UD学会(2025)

また、同学会は「授業UDモデル」という階層モデルを通して、

多様なニーズに応じた手立てを、5つの視点から検討・実施するための枠組みを示しています。

引用:日本授業UD学会(2025)「授業UDモデルVer.2.0」

都道府県や市町村の教育センター等が作成している授業UDの資料の多くも、このモデルを参考にしていると考えられます。

より詳しく知りたい方は、参考資料としてご参照ください。

2 「特別」ではないもの

先日、人間ドックを受けた際、医療スタッフの方から次のような声かけがありました。

「次は赤い椅子でお待ちください」

「この印に合わせて足を置いてください」

「カメラを鼻から入れますが、口から呼吸できますので、安心してください」

こうした案内のおかげで、不安を感じることなく、安心して検査を受けることができました。

これは、「構造化」や「見通し」に配慮されたデザインの一例といえます。

同様に、学校の授業においても、

「プリントの文字を読みやすくする」

「道具の置き場所をラベルで示す」

「授業のはじめに学習の流れを黒板に示す」

といった工夫によって、児童生徒は安心して授業に臨むことができます。

このように考えると、授業UDは決して「特別なもの」ではありません

私たちが日常生活の中で自然と求めている配慮を、授業という場面において具体化したものといえます。

次は、この感覚をより実感していただくために、いくつかの例を見ていきます。

3 UDがない世界を想像する

ここでは、身近な例を通して、授業UDの重要性について考えていきます。

(1)時間の構造化

授業の「流れ」を黒板に示し、見通しを持ちやすくする工夫です。

では、なぜ「流れ」を示すことが必要なのでしょうか。

見通しがないと不安になる

出演順が分からない紅白を想像してみてください。

いつトイレに行けばよいか分からず、落ち着きませんよね(笑)

見たいアーティストがいる場合は気が抜けず、かえって集中できないかもしれません。

これは授業も同様です。「何をするのか」「あとどれくらいか」が分からない状態では、児童生徒は安心して学ぶことができません。

(2)刺激量の調整

教室内の掲示物や内外の雑音など、集中を妨げる刺激を減らす工夫です。

こうした刺激は、どの程度、集中に影響するのでしょうか。

集中を妨げる刺激

大事な仕事の電話中に、「〇〇をよろしくお願いいたします!」と大音量でアナウンスが流れてきたらどうでしょうか。

電話先の相手の声に集中することが難しくなります。

これは本人の努力の問題ではなく、「環境の問題」です。

教室においても同様に、目や耳から入る刺激を調整しなければ、児童生徒は集中して学ぶことができません。

(3)視覚化

写真や図、動画などの視覚情報を活用し、理解を助ける工夫です。

私たちの社会には、多くの視覚的な支援が存在しています。

視覚的情報があると理解しやすい

視覚的情報があると確認しやすい

視覚的な手がかりがないと、分かりにくさや不安を感じやすくなります。

「ガパオライスと言えば分かるでしょう」

「番号を呼ぶので聞き逃さないでください」

と言われると、戸惑いや緊張が生じます。

授業でも、写真や動画等を活用したり、活動内容や残り時間を黒板に示したりすることで、児童生徒はより安心して学ぶことができます。

(4)わかりやすい表現への言い換え

抽象的な表現を避け、具体的で伝わりやすい言葉に言い換える工夫です。

代表的な例が、「ちゃんとしなさい」という指示です。

抽象的で分かりにくい表現

例えば、初めて茶道の場に参加し、「ちゃんとしなさい」と言われたらどうでしょうか。

「ちゃんと」の中身が分からず、戸惑ってしまいます。

授業でも同様に、「ちゃんと」「しっかり」といった表現だけでは、児童生徒に具体的な行動が伝わらないことがあります。

これは「やらない」のではなく、「どうすればよいか分からない」状態だといえるでしょう。

(5)教室環境への工夫

物の置き場所や提出先を明確にし、一目で分かるようにする工夫です。

このような「構造化」は、社会のさまざまな場面で見られます。

場所が決まると整う

片付ける場所が明確であれば、利用者は自然とそれに従って行動します。

教室においても同様に、「整理整頓しましょう」と繰り返し指導するだけでなく、

場所を明確にしたり、モデルを写真で示したりすることで、児童生徒は整理整頓がしやすくなります。

(6)スモールステップ化

目標達成を支えるために、学習を段階的に分ける工夫です。

では、なぜスモールステップが重要なのでしょうか。

大きすぎるステップは意欲を下がる

準備が整っていない状態で大きな課題に直面すると、「無理だ」と感じてしまいます。

教師は、いわばその課題を乗り越えてきた「熟達者」です。

しかし、すべての児童生徒が同じように取り組めるとは限りません。

そのため、誰もが取り組みやすいように目標を小さな段階に分け、一つひとつ達成感を積み重ねられるようにすることが重要です。

4 授業UDクイズにチャレンジ

【問題】

ある高等学校のA先生は、毎週、生徒に「問題集」の提出を課しています。

しかし、提出先として指定したカゴには、毎回、問題集が乱雑に入れられてしまいます。

A先生は「提出時は整理して入れましょう」と生徒に指導していますが、なかなか改善されません。

さて、この場面を授業UDの視点から考えると、A先生はどのような工夫ができるでしょうか。

・・・

いかがでしょうか。考えはまとまりましたか?

ヒントは、「構造化」と「視覚化」です。

それでは、解答を確認してみましょう。

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【解答はこちら】

本コラムのおすすめは、「見本の写真を掲示する」です。

「見本」を写真で具体的に示すことで、生徒はどのように提出すればよいかを一目で理解できます。

その結果、整理整頓が自然と促されます。

このように、A先生が注意を繰り返すのではなく、環境を整えることで、生徒の行動は自然と変わっていくことがあります。

また、生徒にとっても、整理整頓の仕方を学ぶ機会となり、望ましい行動の定着につながります。

デザインを工夫することで、児童生徒は「わかる・できる・楽しい」学びに近づいていきます。

それは同時に、教師にとっても

「児童生徒のよさがわかる

「効果的な指導ができる

「学校や授業が楽しい

といった実感につながる取組でもあります。

日々の教育活動の中で、「UD化できることはないか」という視点から、身の回りを見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 授業のユニバーサルデザイン(授業UD)は、障害の有無にかかわらず、多くの児童生徒にとって「わかる・できる・楽しい」学びを実現するための、授業づくりの考え方です
  • 授業UDは「特別なもの」ではなく、私たちが日常生活の中で求めているデザインを、授業において具体化したものと捉えることができます
  • 授業UDの視点から授業をデザインし直すことで、児童生徒の学びやすさと、教師の指導のしやすさの双方が高まります

関連書籍のご案内
人的環境のユニバーサルデザイン 東洋館出版社 阿部利彦・赤坂真二・川上康則・松久眞実

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