【生徒指導の記録】はじめてでも大丈夫、押さえておきたい基本マナーと留意点

いじめ対応の記録やケース会議の資料など、公的な記録を作成する際に、

どこまで書いていいのかわからない

どう書いたらいいのか教えてほしい

と感じている先生は多いのではないでしょうか。

このコラムでは、生徒指導の記録の書き方について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 記録の意義

記録には、大きく分けて2種類があります。

  • 個人的な記録:記録した本人だけが見るもの。個人が保存。
  • 公的な記録:供覧や会議などで他の教職員が見るもの。学校が保存。

特に「公的な記録」には、次のような特徴があります。

  • 情報を正確に伝え、読み手に誤解を与えない表現が求められる
  • 公立学校では、公文書として条例等に従って管理・保管される
  • いじめ重大事態の調査資料として使用されることがある(学校の対応を証明する資料となる)
  • 情報公開条例や個人情報保護条例等に基づく開示請求を受ける可能性がある

そのため、「公的な記録」の作成する際には、特に書き方に配慮する必要があります

2 基本マナーと留意点

(1)一文を短くする

一文が長いと、読み手の頭にスッと入りづらくなります。

例1

  • 2学期末のAさんの学校生活アンケートに、いじめ被害の記述があったため、担任と生徒指導担当が放課後に聴き取りを実施したところ、Aさんが「丸をつけ間違えた」と話したため、学校はいじめを認知しなかったが、Aさんの様子を見守ることとした。
  • 2学期末のAさんの学校生活アンケートに、いじめ被害の記述があった。
    放課後、担任と生徒指導担当が聴き取りを実施したところ、Aさんは「丸をつけ間違えた」と話した。
    聴き取りの結果、学校はいじめ認知せず、Aさんの様子を見守ることとした。

伝えたいことが多いほど、一文は長くなりがちです。

読み返して「読みにくい」と感じたら、文を短く区切りましょう。

一文に書く内容は一つ
(一文一義)

(2)5W1Hで書く

「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「どうした」を明確に記録します。

例2

いつ  :12月1日(月)8時頃

どこで :生徒玄関で

誰が  :Bさんが

誰に  :Cさんに向かって

どうした:「ウザい」と言った

中でも重要なのは、主語の「誰が」を省略しないことです

例3

  • 生徒玄関で、CさんはBさんから「ウザい」と言われた。
    その後、下駄箱を蹴り、走り去る姿を、〇〇教諭が目にした。
  • 生徒玄関で、CさんはBさんから「ウザい」と言われた。
    その後、Cさんが下駄箱を蹴り、走り去る姿を、〇〇教諭が目にした。

文法上は、主語を省略できます(2文目は前文の主語を引き継ぐため)。

それでも、正確性を重視して、主語を省略しないことが大切です。

多少読みにくくても、主語を明確にする

多少読みにくくても
主語を明確にする

(3)事実を書く(主観を書かない)

主観(推測・感想など)が混ざると、どこまでが事実か分からなくなります。

例4

  • 本人は自由にゲームができる生活を送っており、不登校が続く理由は家庭環境にある(主観)
  • 本人は自由にゲームができる生活を送っている(事実)

解説:客観的な事実だけを書きます

例5

  • 本人には発達障害の傾向がある(主観)
  • 本人は整理整頓が苦手で、忘れ物を繰り返す(事実)

解説:診断がない場合は、診断名等は書きません

例6

  • 学校の説明に、保護者は理解を示した(主観)
  • 学校の説明に、保護者は「学校の対応には感謝しています」と言った(事実)

解説:発言内容を「 」で書きます

ポイントは、

主観:感じたこと、考えたこと

事実:見たこと、聞いたこと、起きたこと

主観:感じた、考えた

事実:見た、聞いた、起きた

主観的な「〇〇と思われる」「〇〇のようだ」「〇〇かもしれない」といった表現は避けましょう。

(4)読まれてトラブルになる表現を使わない

文書が開示された場合、本人や保護者が記録を目にします。

日頃から「読まれることを前提とした」文書の作成を心がけることが大切です。

例7

  • 本人は、授業をサボり続けており、わがままで自分の好きなことしかしない。
  • 本人は、授業を無断欠席し続けており、自分の興味がある活動以外には取り組まない

解説:感情的・否定的な表現は避けます

例8

  • 保護者は、子どもに無関心だが自分が困ったときだけクレームを入れてくる
  • (記録しない)

解説:感情的・否定的な評価は記録しません

このような感情的・否定的な記述は、開示時に摩擦の原因となる可能性があります。

書かなくてよいことは書かない

(5)公的な言葉を使う

公文書として扱われることを意識し、公的な言葉を使います。

例9

  • 家庭謹慎   特別指導
  • カンニング  考査時の不正行為
  • (学校の)事情聴取  聴き取り
  • リスカ  リストカット
  • 彼氏・彼女  交際相手
  • 捜索願  行方不明者届

適切な言葉選びを習慣化すると、面談などの場面でも落ち着いた言葉遣いができます。

3 文章以外の記録

記録は文章だけに限りません。

ケガや落書きなど、具体的な被害が確認できる場合には、写真を撮影して記録として保存します

ネットトラブルの場合は、児童生徒の承諾を得たうえで、画面のスクリーンショットを記録として保存します

また、被害の内容によっては、学校と警察が連携して対応する必要があります。

特に、児童ポルノ法等に抵触するおそれがある事案では、

速やかに警察に相談・通報し、連携して対応することが不可欠です。

このような事案では、学校が写真を撮影・保存する行為自体が問題となる可能性があります

必ず警察から助言を得ながら、慎重に対応してください。

文部科学省(令和5年2月27日付け)通知「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」

4 個人情報の取扱い

最後は、学校としての対応に関する留意点です。

例えば、ある保護者から学校に、次のような要求があったとします。

うちの子がいじめられているような気がする。先月のいじめアンケート(紙)を、クラス全員分見せてほしい。

この場合、学校はいじめアンケートを見せることができるでしょうか?

調査済みのいじめアンケートは、公文書に該当します

そのため、学校は情報公開条例や個人情報保護条例等に基づいて、適切に対応する必要があります。

このケースでは、自分の子どもが記入したアンケートは、開示が認められるものと思います。

しかし、他の児童生徒のアンケートは、筆跡も個人情報に当たる可能性が高いため、

たとえ情報公開条例に基づく請求があっても、原本の公開は認められないものと考えられます

公開してはならない情報を、誤って公開してしまわないように、

公開や開示については、法務の担当者に相談するなどして、慎重に対処することが求められます。

非公開は公開に変えられるが
公開したら非公開には戻せない

まとめ

  • 他の教職員が目にする記録は「主観を書かない」「感情的・否定的な表現を避ける」「公的な言葉を用いる」などを意識する必要があります
  • 記録は文章に限らず、スクリーンショットや写真なども、適切に保存する必要があります
  • 個人情報の管理・保護を意識し、公開や開示については、法的根拠に基づいた慎重な対処が必要となります

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学校のいじめ対策と弁護士の実務 青林書院 坂田 仰(編集代表)

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