本コラムでは、学校現場における「合理的配慮」について、やさしい言葉で解説しています。
前編では、合理的配慮の概要と、理解の土台となる重要なキーワードについて整理しました。
後編は、合理的配慮の進め方や、他の児童生徒への説明の仕方など、より実践的な内容をご紹介します。
前編を読んでいない方はこちら
↓ ↓ ↓

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
3 合理的配慮の進め方
(1)4つのステップで進める
合理的配慮は、次の4つのステップで進めていきます。
- 相談を受ける
- 内容について話し合う
- 合理的配慮を実施する
- 見直し・改善する
では、具体的に見ていきましょう。
最初のステップは、
本人・保護者から、意思の表明(合理的配慮の求め)を受けることです。
このステップの背景には、次の言葉があります。
「私たち抜きに、私たちのことを決めないで(Nothing about us, without us)」
これは、障害者権利条約のスローガンとなった言葉です。
この言葉は、障害のある本人の意思を尊重することの重要性を示しています。
そのため、本人や保護者の声を聞かずに、
学校だけで考えた配慮は、「合理的配慮」とは言えません。
また、相談されるのを「待ち続ける」のではなく、
必要に応じて、学校から本人・保護者に働きかける姿勢も望ましいとされています。
本人・保護者の求める合理的配慮について、丁寧に話を聴きながら、
困りごと、必要な配慮、期待する効果などを明確にしていきます。
もし、「均衡を失した又は過度の負担」に当たると判断する場合は、
本人・保護者にその理由を丁寧に説明し、代替措置を含めた対応を提案します。
お互いの立場を理解しながら、折り合いのつく方法を一緒に探していくことが重要です。
粘り強く対話を重ね、合意形成を目指しましょう。
合意した合理的配慮は、「個別の教育支援計画」に明記します(Plan)。
そして、全教職員で共通理解を図りながら、合理的配慮を実施します(Do)。
なお、次のような発言には注意が必要です。
「合理的配慮を提供したんだから、あなた自身も努力して…」
「特別な対応を受けているんだから、感謝の気持ちをもって…」
これらは、「障害の社会モデル」ではなく、「障害の個人モデル」に基づいた発言です。
もちろん、努力や感謝そのものは大切なことですが、
「合理的配慮」の文脈において、努力や感謝を求めることは、法令の趣旨とは異なります。
児童生徒を傷つけることがないよう、十分に注意したいところです。
\ やさしく解説「障害の社会モデル」/
↓ ↓ ↓

合理的配慮は、一度決めたら終わりではなく、柔軟に見直していく必要があります。
そのため学校は、「本人が十分な教育を受けることができているか」という観点から、
定期的に評価を行います(See)。
この際、本人の言葉に耳を傾けることを、特に重視していただきたいと思います。
評価を踏まえ、必要に応じて改善を行います(Action)。
PDCAサイクルを回していきます。
作成した「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」は、
本人・保護者の了承を得たうえで、進学先等に引き継ぐことで、
切れ目のない支援を実現しやすくなります。

(2)合理的配慮の3観点11項目
文部科学省は、学校における「合理的配慮」を、3つの観点11項目に整理し、各障害種に応じた具体例を示しています。
ここでは、その中から自閉スペクトラム症のある児童生徒への合理的配慮について、参考例を紹介します。
すべてを実施する必要があるわけではありません。また、これ以外は実施する必要がない、ということではありません。

観点1:教育内容・方法
- 困難を改善・克服するための配慮
例:ソーシャルスキルの未学習を考慮し、獲得に向けて指導する。 - 学習内容の変更・調整
例:理解の程度を考慮し、学習内容を焦点化する。 - コミュニケーション・教材の配慮
例:抽象的な表現を避け、具体例や図、写真を用いて説明する。 - 学習機会や体験の確保
例:段階や順序を工夫し、体験活動に取り組めるようにする。 - 心理面・健康面の配慮
例:見通しが持ちやすいように、学習の予定をあらかじめ示す。
観点2:支援体制
- 専門性のある指導体制
例:主治医やスクールカウンセラーと連携し、支援を行う。 - 児童生徒・教職員等の理解
例:自閉スペクトラム症の特性について、校内研修を行う。 - 災害時等の支援体制
例:緊急時の心理状態(パニックなど)に配慮し、教職員がサポートする。
観点3:施設・設備
- 校内のバリアフリー化
例:特有の感覚に配慮し、光・音などの刺激を減らす。 - 特性等に応じた施設・設備
例:必要に応じて、クールダウンのための場所を確保する。 - 災害時等に対応できる施設・設備
例:刺激が多い場所では休めないことに配慮する。
これらの観点を踏まえ、一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズ等に応じて、
「合理的配慮」を検討・決定していくことが望まれています。

ここまでのまとめ
- 合理的配慮は、本人・保護者の意思を尊重しながら、対話を重ね、実施・見直しを繰り返すプロセスとして進めていくことが重要です
- 文部科学省が示す「3観点11項目」を参考にしつつ、一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズに応じて、柔軟に合理的配慮を検討・決定していくことが求められます
4 他の児童生徒への説明方法
学校は、「みんな同じように」という考え方が、今も根強く残っている場所でもあります。
そのため、合理的配慮を受けている児童生徒に対して、ほかの児童生徒が「ずるい」と感じてしまうことがあるかもしれません。
たとえ言葉に出されなくても、周囲からネガティブな感情を向けられることは、本人にとって、とてもつらいことです。
このような状況を防ぐためには、児童生徒が合理的配慮について学ぶ機会をつくることが大切です。
もちろん、すべての人が納得する「魔法のような方法」は存在しません。
ここでは、参考となる説明の例を2つご紹介します。
いずれの場合も、本人・保護者の意向を確認したうえで、計画的に進めることが重要です。
例1 眼鏡をかけるのって、ずるい?
視力の低い人が眼鏡をかけるのって、「ずるい」と思いますか?
きっと、そんなふうには思わないですよね。
では、
「みんなと同じように、眼鏡をかけずに(裸眼で)勉強しなきゃダメだ」と思いますか?
たぶん、それも思わないですよね。
それは、どうしてでしょうか?
・・・
それは、眼鏡がなければ黒板の字が見えなくて、勉強ができなかったり、
とても大変になったりすることが、分かっているからだと思います。
実は、〇〇さんが使っている△△△(例:アプリ、別プリント)も、眼鏡と同じ役割をしています。
それがあるから、〇〇さんは勉強を始めることができます。
それがなければ、勉強がとても大変になってしまうのです。
△△△(例:アプリ、別プリント)を使うことで、〇〇さんは、ほかの人と同じスタートラインに立つことができます。
この話を聞いて、みなさんはどう感じましたか?
この説明は、次のような特徴があります。
- 合理的配慮が「有利になるためのもの」ではなく、「同じスタートラインに立つためのもの」であることを説明できる
- 児童生徒にとって身近な例を用いることで、ノーマライズ(一般化、正常化)しやすい
- 本人の努力不足ではないことを、自然な形で伝えられる

例2 いろいろな自動車がある
自動車には、さまざまな種類があります。
例えば、コンパクトカー、スポーツカー、トラック、バス、ショベルカー、キッチンカーなどです。
それぞれ、スピードや小回りの良さ、乗れる人数など、得意なことが違っています。
では、少し想像してみてください。
「コンパクトカーに乗っている人が多いので、それに合わせて、
世界中のすべての道路を、細くして、速度制限を下げて、駐車スペースも小さくします。」
こんなふうに決まったら、
ほかの車に乗っている人たちは、どう感じるでしょうか?
とても運転しにくくなって、困ってしまいますよね。
このように、「多数派」に合わせてつくられた社会は、
「少数派」の人たちにとって、とても苦しい環境になってしまうことがあります。
では、この自動車の話を、私たちの学校に当てはめて考えてみましょう。
学校の学習方法や試験のやり方は、実は、「多数派」に合わせたものになっています。
そのため、「少数派」の人にとっては、学びにくかったり、
不公平に感じられたりすることがあり、大きな課題となっています。
今回、〇〇さんが△△△(例:試験時間の延長、別室受験)を利用するのは、
まさにこのような課題に対して、環境を調整するための取り組みです。
〇〇さんに問題があるのではなく、「多数派」に合わせすぎている学校の仕組みに、課題があるのです。
もし、みなさんの中に、
「私も少数派で、困っていることがある」
と感じている人がいたら、遠慮せずに相談してください。
この説明は、次のような特徴があります。
- 「障害の社会モデル」に基づき、社会や学校の仕組みの課題として説明できる
- 本人を「できない人」ではなく、「できることが違う人」として捉えることができ、尊厳を守ることにつながる
- 学び方の多様性について考えるきっかけになる

なお、「ずるい」と発言する児童生徒がいた場合には、その言葉の背景にある思いを理解することが重要です。
その児童生徒自身が、何らかの理由で我慢をしていたり、納得できない気持ちを抱えたりしているのかもしれません。
説明するだけでなく、気持ちに耳を傾けることも、大切にしたいところです。
まとめ
- 「合理的配慮はずるい」「わがまま」といった誤解そのものが、合理的配慮を必要とする児童生徒にとっての社会的障壁(バリア)となり、学びへの参加を妨げる要因になっています
- 「もし自分が負傷して、合理的配慮を求める立場になったら」と想像してみることで、合理的配慮を他人事ではなく、自分事として捉え直すことができます
- どれほど先生が質の高い授業を行っていても、社会的障壁(バリア)がある状態では、本来目指している学びの成果につながらない可能性があります
もっと知りたい先生へのオススメの書籍
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考になりましたら、ぜひ勤務先やSNSでシェアしていただけますと幸いです。
PSYCLA(サイクラ)は、臨床心理学・心理学の理論・技法を、教育現場で活用しやすい形に再構成し、わかりやすい情報としてお届けしています。
次回もどうぞお楽しみに。

