ケース会議に参加したり、他の教職員から相談を受けたりするとき、
起きている「問題」について話を聞き、対応策を考えることがあると思います。
その際に大切なのが、まず「問題」を整理することです。
このコラムでは、学校現場で起こる「問題」を整理するための3つの観点について、わかりやすく解説します。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 本人は何に困っているのか
例えば、暴力行為を繰り返す児童がいたとします。
教師にとっては、何度指導しても暴力行為が繰り返されるため、どのように対応するか迷う場面だと思います。
「どのように指導したら、本人が暴力行為をやめるのか…」
そう考えながら、本人の内面を変えるための対応が話し合われるかもしれません。
この問題を整理するために、もう一方で考えたいのが、「本人は何に困っているのか」という点です。
周囲にとっての問題の背景には
本人の困りごとがあるかもしれない
例えば、本人が困っているのは、
「自分の気持ちを言葉にできない」
「自分を守る方法が、暴力しか分からない」
「家庭で安心して過ごせない」
といったことかもしれません。
そして、その困りごとの影響を受けて暴力行為をしているとすれば、
暴力行為は、本人なりの「対処行動」と捉えることもできます。
そのように考えると、本人の「困りごと」を解決することが、
周囲にとっての「問題」を解決するための近道になるかもしれません。
本人の困りごとの解消が
問題解決への近道になるかもしれない
この観点を意識すると、次のようなケースについても、
「本人は何に困っているのか」と考えることにつながります。
- ある児童生徒が授業中の立ち歩きを繰り返し、学級担任が指導に困っている。
- 不登校の子どもが勉強しないことについて、保護者から相談を受けた。
- ある児童生徒のきつい言葉遣いに、周囲の児童生徒が嫌な思いをしている。
周囲の人が困っている気持ちを想像しながら、
同時に、「きっと本人も困っているのではないか」と、本人にも目を向けてみます。
もちろん、このような視点を持つことは、周囲にとっての「問題」を軽視したり、無視したりするということではありません。
大切なのは、本人にとっての問題と、周囲にとっての問題の両方に目を向け、それぞれについて考えることです。
それぞれの「困りごと」を整理することで、ケースの全体像を俯瞰して捉えられるようになります。
それぞれにとっての「問題」を
別々のお皿に載せて眺めてみる
「別々のお皿に載せる」というのは、それぞれの「問題」を大切に扱うこと、
そして、それぞれの「願い」を混ぜないことにもつながります。
どちらか一方だけを見るのではなく、いったん別々に整理して眺めてみる。
そうすることで、「何が必要なのか」「どこから支援するか」が見えやすくなり、より適切な対応を考えやすくなります。

2 複雑な問題は、まず分割する
例えば、中学生の不登校について、学級担任から次のような相談を受けたとします。
うちの学級のAさんが学校を休み始めて、もう3か月になります。保護者の話では、朝は起きられないし、昼夜逆転もしているようです。勉強もまったくしていません。本人は「学校には行きたくない」と言うだけです。友だちとも会っていないようで、ゲームばかりしています。母親は、すぐにでも学校に行かせたいと考えています。父親は、本人の気持ちを大切にしていますが、進路のことを心配しています。どうしたらいいのでしょうか。
このような相談を受けると、「不登校をどう解決するか」を考えたくなるかもしれません。
しかし、この事案を「不登校」という大きな括りで捉えてしまうと、
いろいろなことが絡み合っていて、何から手をつければよいのか分からなくなることがあります。
ルネ・デカルト「困難は分割せよ」
そこで、まずは問題をいくつかに分割してみます。
例えば、
- (生活)朝、起きられず、昼夜逆転している
- (本人の声)「学校には行きたくない」と言っている
- (学習)勉強していない
- (対人関係)友だちとも会わない
- (行動)長時間、ゲームしている
- (保護者)母親はすぐにでも登校させたいが、父親は本人の気持ちを大切にしている
といった具合です。
もちろん、これらは互いに関係している可能性があります。
朝起きられないから、学校に行けないかもしれません。
友だち関係に悩んでいることが、学校に行きたくない気持ちにつながっている可能性もあります。
このように、問題を小さく分けてみると、それぞれの問題について考えたり、問題と問題の関係について考えたりしやすくなります。
そして、小さく分けた一つの問題が改善することで、別の問題にもよい影響を及ぼすことが期待できます。
一つの問題を解決することが
別の問題の解決につながるかもしれない
例えば、「勉強していない」という問題について、できることを考えるなら、
- 今、本人は勉強について何に困っているのか
- 本人は、どの程度なら取り組めそうなのか
- 学校以外の場所や方法なら、勉強できる可能性はないか
など、扱いやすいサイズだからこそ、さまざまな視点から考えることができます。
そして、学校以外の場所で勉強することが、昼夜逆転の解消につながるかもしれません。
また、勉強をきっかけに本人とのやり取りが増えることで、学級担任との信頼関係を築くきっかけになるかもしれません。
問題を小さく分割すると
スモールステップの取組になる
学校現場では、今回の架空事例よりも、さらに複雑なケースが起こることがあります。
いくつもの問題が絡み合っていると、「いったい何ができるのか…」と迷ってしまうこともあるでしょう。
そんなときこそ、一度立ち止まって、問題を小さく分けてみてください。
「今、できることは何か」
「まず、どこから取り組めそうか」
そう考えることで、複雑に見えていた問題の中から、今できる小さな一歩が見えてくるかもしれません。

3 学校の役割と限界を整理する
学校現場では、児童生徒に関するさまざまな問題が起こります。
「問題」が深刻であるほど、教師として「何とかしてあげなければ」と思うこともあるでしょう。
しかし、熱心に対応しようとするほど、
「学校が担う範囲を超えていないか」と、一度立ち止まって考えることも大切です。
例えば、保護者から本人のスマホにGPS機能をつけられ、行き先を確認されている高校生がいたとします。
本人は、「どこにいるか見られて、ネチネチ言われるのが嫌だ」と感じています。
学校は本人から相談を受け、保護者と面談し、説明を重ねました。
しかし、保護者は「何かあったときに心配だから」「親として注意することはある」と話しています。
このようなとき、本人のつらさを心配し、「保護者の対応を何とか変えたい」と考えるのは、自然なことです。
一方で、
「家庭での保護者の対応について、学校にどこまでできることがあるのだろうか」
と考えることも必要になります。
このような場面で考えたいのが、「学校の役割と限界」です。
一度立ち止まって
「学校の役割と限界」を考える
例えば、「保護者の対応を学校が直接変えることは、学校だけでは難しい」と整理することで、
「では、学校には何ができるのか」「誰と連携できるのか」と考えやすくなります。
そして、
- 本人が困っていることを聴き、気持ちに寄り添う
- 本人が保護者に自分の気持ちを伝えられるよう、一緒に整理する
- 本人と保護者が、それぞれの考えを落ち着いて話せる機会をつくる
- スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携する
といったことが考えられます。
「限界」を見ることで
「学校にできる範囲」が見える
学校だけでは解決できない問題を、学校だけで解決しようとしない。
そして、学校でできることについては、できる範囲を明確にして取り組む。
この線引きができると、「次に何ができるのか」を考えやすくなります。
「できないこと」を明確にするのも
支援の一部
「学校では、ここまでしかできない」と考えることに、罪悪感を持つ必要はありません。
むしろ、「学校だけでは難しいこと」が明確になることで、「学校にできる範囲」も明確になります。
学校の役割を、適切な大きさに戻してみる。
そうすることで、学校が本当に担うべきことに力を注ぎ、必要に応じて他の機関や専門職と連携できるようになります。

まとめ
- 本人と周囲(保護者、他の児童生徒、学級担任など)、それぞれにとっての「困りごと」を並べてみる
- 複雑に絡み合った「問題」は小さく分けて検討し、分割した問題同士のつながりに目を向ける
- 学校にできないことを整理することで、学校にできることや、連携する関係機関・専門職が見えてくる
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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