【児童生徒の行方不明】落ち着いて対応するための状況整理チェックリスト

警察庁の公表資料によると、近年、全国で年間およそ8万件の行方不明者届が受理されています。

年齢層別では10歳代が最も多く令和6年には約1万6千件にのぼりました。

多くのケースは早期に所在が確認されていますが、学校が対応の一端を担う場面も少なくありません。

このコラムでは、家出などによる行方不明事案が発生した際、学校として押さえておきたい対応のポイントを整理します。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 保護者から連絡を受けたら

(1)聴き取る内容

保護者から「児童生徒の行方がわからない」と連絡を受けた場合、

何より大切なのは、動揺している保護者の気持ちに寄り添いながら、状況を落ち着いて整理していくことです。

強い不安や焦りの中では、情報がどうしても断片的になりがちです。

学校が冷静に受け止め、一つひとつ確認していく姿勢は、保護者の安心につながります

状況整理チェックリスト

 内容備考
行方がわからなくなった日時・最後に本人の顔を見た時刻と場所
・そのときの様子(言動、表情など)
行き先として考えられる場所・友人宅、交際相手宅、過去に宿泊した家庭
・よく訪れる場所、関心を持っている場所
携帯電話の所持状況・電話はつながるか(電源のON/OFF)
・メッセージは既読になるか
・GPSによる位置情報の確認が可能か
財布の所持状況・おおよその所持金(行動範囲の推測材料)
・現金や通帳等を持ち出している可能性
自室などに残されているもの・置き手紙やメモの有無
・制服、着替え、大きめのかばん など
服装・移動手段・普段着か、制服か
・定期券や自転車は自宅に残っているか
気になる変化やサイン・最近の様子
・印象に残る出来事や発言 など
保護者が得ている協力体制・家族や親戚などの協力状況
・自宅を留守にしない体制が確保できるか
警察への相談状況 ・「行方不明者届」の提出予定の有無
 (提出先:居住地を管轄する警察署)
10保護者と学校の連絡方法・すぐに連絡が取れる携帯電話番号
1 行方がわからなくなった日時
・最後に本人の顔を見た時刻と場所
・そのときの様子(言動、表情など)
2 行き先として考えられる場所
・友人宅、交際相手宅、過去に宿泊した家庭
・よく訪れる場所、関心を持っている場所
3 携帯電話の所持状況
・電話はつながるか(電源のON/OFF)
・メッセージは既読になるか
・GPSによる位置情報の確認が可能か
4 財布の所持状況
・おおよその所持金(行動範囲の推測材料)
・現金や通帳等を持ち出している可能性
5 自室などに残されているもの
・置き手紙やメモの有無
・制服、着替え、大きめのかばん など
6 服装・移動手段
・普段着か、制服か
・定期券や自転車は自宅に残っているか
7 気になる変化やサイン
・最近の様子
・印象に残る出来事や発言 など
8 保護者が得ている協力体制
・家族や親戚などの協力状況
・自宅を留守にしない体制が確保できるか
9 警察への相談状況
・「行方不明者届」の提出予定の有無
 (提出先:居住地を管轄する警察署)
10 保護者と学校の連絡方法
・すぐに連絡が取れる携帯電話番号

確認事項は多岐にわたります。

そのため、保護者の心情や状況に十分配慮しながら無理のない形で聴き取ることが大切です

実際には、一度の電話ですべてを確認するのが難しい場合も少なくありません。

その際は、「一度整理してから、改めてご連絡いたします」と伝えるなど、段階的に情報を整理していく姿勢が望まれます。

学校の落ち着いた対応そのものが
保護者にとって大きな支えとなる

本コラムの内容に沿った「記録用紙」を用意しています。

必要に応じてダウンロードし、ご自由にお使いください。

(2)警察との連携

行方不明の背景には、家出だけでなく、犯罪や事故に巻き込まれたり、自殺を図ったりするなど、

生命や身体に危険が及んでいる可能性も考えられます。

そのため学校は、関係機関と連携しながら、「所在確認」と「安全確保」を最優先に対応する必要があります。

保護者から連絡を受けた際には、児童生徒の安全を第一に考え、

警察への相談を保護者に丁寧に勧めることが大切です

なお、「行方不明者届」を提出できるのは、原則として保護者または親族に限られます。

学校や友人が届け出ることはできません。

その点も含めて手続きの流れをわかりやすく説明することが、保護者の不安を和らげることにつながります。

一般的に、届出の際には次のような資料が求められます。

  • 本人の写真
  • 届出人の身分証明書
  • 関係資料(本人が残した手紙やメモなど)

届出が受理されると、警察のシステムに情報が登録され、全国の警察で共有されます。

通常の警察活動などを通じて情報の照合が行われ、発見・保護につながるケースも少なくありません。

警察の協力を得ることは
決して大げさな対応ではありません

子どもの安全を守るための、当然で大切な判断です。

「明日帰る」という連絡があった場合

実際の場面でよくあるのが、本人から保護者へ

「どこにいるかは言えない。明日帰る」

といったメッセージが届くケースです。

このような連絡があると、「一晩様子を見るべきか」か迷われることもあるでしょう。

保護者として、本人の言葉を信じたいという思いが働くのは自然なことです。

しかし、こうした場面では慎重な判断が必要です。

なぜなら、

  • そのメッセージが本人によるものとは限らない(第三者が携帯電話を操作している可能性)
  • 「やっぱり今日も帰らない。明日は帰る」という連絡が続き、結果的に長期化するケースがある

といったリスクが、現実に存在するからです。

学校としては、保護者の思いに寄り添いながらも、

「所在確認」と「安全確保」を最優先に考える視点を、落ち着いて共有することが大切です。

2 こころのケア

行方不明事案では、「所在確認」と「安全確保」が最優先です。

しかし同時に、「こころのケア」という視点も欠かすことはできません。

(1)保護者へのケア

行方不明に至る背景はさまざまですが、

多くの場合、保護者は強いショックと不安の中で、動揺していることと思います。

そのため大切なのは、その感情を丁寧に受け止める姿勢です

  • 「本当にご心配ですよね」
  • 「せめて既読になってほしいですよね」
  • 「今は不安でいっぱいですよね」

このように気持ちを言語化する言葉は、保護者に「わかってもらえてる」という安心感をもたらします

また、保護者が疲弊し過ぎないよう、気遣うことも大切です

  • 「お疲れのことと思います」
  • 「どなたか協力してくださっている方はいらっしゃいますか」
  • 「学校でできることはありますか」
  • 「こちらでお手伝いできることがあれば、すぐに対応します」

このように声をかけ、学校として伴走する姿勢を示すことは、保護者の孤立感を和らげます。

また、強い不安の中では、

きっとすぐ戻ってくるはずだ」と考えようとすることがあります。

これは、不安を少しでも和らげようとする自然な心の働きともいえます。

このようなときは、

「それは楽観視しすぎです」

と否定するのではなく、

「そうであることを願いたいですね。
  ただ、万が一、事故などに巻き込まれてる可能性もゼロではありません。
  念のため、警察にも相談しておきませんか」

「そうであることを願いたいですね。
  ただ、万が一、事故などに巻き込まれてる

  可能性もゼロではありません。
  念のため、

  警察にも相談しておきませんか」

といったように、思いを受け止めながら安全確保を最優先にする提案を行うことが望まれます

否定ではなく、視野を広げるかかわりです。

強い不安の中では、誰でも
普段どおりの判断が難しくなる

再発防止の視点

家出の背景に、親子間の葛藤や衝突がある場合、

本人が戻った直後に強く叱責されることで、再び家を出てしまうケースがあります。

そのようなリスクが想定されるときは、学校からさりげなく助言することが有効です。

たとえば、

「帰ってきたときに強く叱ってしまい、その後もう一度家出になった事案もあります」

と伝えることで、叱責の危険性に気づいてもらうことができます。

責めるのではなく、まずは無事を喜び、安心できる環境を整えること。

その積み重ねが、家族関係の回復や再発防止につながっていきます。

(2)戻った後の本人へのケア

本人が無事に戻った後も、対応は終わりではありません。

むしろ、ここからが本当の支援の始まりともいえます。

まず心がけたいのは、理由を追求することよりも、

「無事でよかった」という安心のメッセージを伝えることです。

  • 「戻ってきてくれてよかった」
  • 「無事で安心しました」
  • 「本当に心配していたよ」

こうした言葉は、張りつめていた本人の緊張をやわらげ、「ここにいていい」と感じられる土台をつくります

そのうえで、次のような点を聴いていきます。

  • どのような気持ちで家を離れたのか
  • 何に困り、何に悩んでいたのか
  • 今、どのように感じているのか

家出の背景は複雑であることが多く、本人がすぐに事情を話せない場合もあります。

そのため、安心して話せる雰囲気を整え、急がず粘り強く聴いていく姿勢が大切です

必要に応じて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーにつなぐことも、有効な選択肢になります。

目指すのは、単に「元の状態に戻す」ことではありません。

安心できる環境を整える」という視点で、継続的にかかわり、支援していきたいところです。

「迷惑をかけた」ではなく
「限界だった」というSOSサイン

(3)行方不明が長期化した場合

所在や安否がわからない状態が長引くと、

保護者や家族は、

どうして帰ってこないのか

生きていてくれているのか

といった、答えの出ない問いの中で揺れ続けることになります。

このような状態は、心理学で「あいまいな喪失(ambiguous loss)」と呼ばれます。

終わりが見えないまま続く喪失は、心の整理がつきにくく、

通常の喪失以上に強いストレスや心理的な苦痛を引き起こすことがあるとされています。

学校として、次のような配慮が大切になります。

  • 「前向きに考えましょう」「別のことを考えたほうがいい」といった安易な励ましは控える。
  • 定期的に連絡を取ったり、安心して気持ちを話せる場を設けたりして、支えの存在を実感してもらえるようにする。
  • 必要に応じて、スクールカウンセラーや専門機関と連携し、継続的な心理的支援につなぐ。

また校内においても、次のような配慮が必要です。

  • 不確かな情報や憶測が広がらないようにする。
  • 周囲の児童生徒の不安や動揺に目を向け、こころのケアに取り組む。

状況が長引くと、児童生徒たちの間にも不安や罪悪感など、さまざまな感情が生まれることがあります

適切な情報発信と温かな寄り添いで、心の落ち着きを取り戻していくことが大切です。

もう一つ、見落としてはならないのが教職員自身の負担です。

対応が長期化すると、無力感や緊張状態が続き、疲労が蓄積しやすくなります。

「何も進展がない」という状況は、支援する側の心も消耗させてしまいます。

危機対応という通常とは異なる状況の中では、

普段とは違う心理的反応が生じるのも自然なことです

そうした反応を落ち着いて受け止めながら、

教職員自身のケアにも意識を向けていくことが大切です。

静かに寄り添いながら、組織として支え合う体制を整えていきたいものです

前に進めないと感じるときは
少しのあいだ一緒に立ち止まる

まとめ

  • 行方不明の連絡を受けた際は、保護者に不安に寄り添いながら、落ち着いて状況を整理する
  • 警察など関係機関と連携し、「所在確認」と「安全確保」を最優先に対応する
  • 本人が戻った後も、まずは「無事でよかった」というメッセージを伝え、安心できる関係づくりを大切にする

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