児童生徒が精神科・心療内科を受診している場合、
「学校での様子が、主治医に十分伝わっていないように感じる」
「支援や対応について助言をもらいたいが、方法が分からない」
このような悩みを抱えることは少なくありません。
その際に役立つのが、「医療機関への情報提供書」です。
本コラムでは、目的や作成の流れ、書き方について、わかりやすく解説します。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 情報提供書とは
医療機関への情報提供書とは、
「児童生徒の学校での様子」を
医療機関に伝えるための書類
医療機関は、限られた診察時間の中でしか、児童生徒の様子を把握できません。
そのため、先生方が日頃見ている「学校での様子」は、診断や治療方針を検討するうえで貴重な情報となります。
(1)目的
『生徒指導提要』には、次のように述べられています。
学校においては、個々の教職員の役割を明確にした上で、チームとして支援する体制を築くと同時に、自殺の危険が高い児童生徒への対応においては、精神科や心療内科などの医療機関との連携を図ることが不可欠です。
第8章 自殺 3.7.3 8.4.2 医療機関、福祉機関との連携・協働
黄マーカーは当Webサイトが引いたもの
このほかにも、発達障害、性的被害、特定妊婦への支援などにおいて、医療機関との連携の重要性が示されています。
精神科・心療内科と連携する方法としては、主に次のようなものがあります。
- 情報提供書の作成(本人の状況を書面で共有する)
- 受診同行(本人の受診に教職員が同行する)
- ケース会議(本人・保護者、主治医、教職員などで話し合う)
受診同行での相談、ケース会議、医療機関からの情報提供書の作成には、費用が発生する場合があります。
どの方法を選択するかは、「何を目的とするか」「学校として対応可能か」という視点に加え、
「本人・保護者の同意が得られるか」「医療機関が対応可能か」なども踏まえて判断します。

その中でも、「医療機関への情報提供書」には、次のような意義があります。
- 学校での様子を伝えることで、本人が適切な医療的支援を受けることにつながる
- 学校での支援や対応について、医療機関に相談できる
- 学校と医療機関の担当者(窓口)を明確にできる
もちろん、情報提供書がなくても、本人や保護者が口頭やメモで、学校での様子を伝えることも可能です。
しかし、本人が自分の状況を整理して説明することは容易ではなく、
保護者も学校での様子を十分に把握できていない場合があります。
そのため、情報提供書は、本人・保護者、医療機関、学校の三者をつなぐ有効な連携ツールといえます。

(2)作成の流れ
情報提供書を作成し、医療機関に提出するまでのおおまかな流れは、次のとおりです。
- 医療機関の予約日が決まる
▼ - 本人・保護者から学校へ「情報提供書」の作成依頼がある
または、学校から提案し、本人・保護者が作成を希望する
(学校から提案する場合が多い)
▼ - 学校が「情報提供書」を作成する
(起案・校長承認を含む)
▼ - 本人・保護者が内容を確認し、情報提供に同意する
▼ - 本人・保護者が医療機関へ持参し、提出する
<留意点>
まず大切なのは、本人・保護者から主治医に、
「学校との連携は、どのような方法がよいか」
「学校からの情報提供書を持参してよいか」
を事前に相談してもらうことです。
受診当日に突然情報提供書を持参するよりも、事前に相談しておくことで、
医療機関も受け入れや対応の準備ができ、連携がスムーズになります。
また、学校から医療機関へ直接連絡したとしても、
医師には守秘義務があるため、本人・保護者の同意がなければ、情報を出すことができません。
そのため、連携は本人・保護者を介して進めることが基本となります。
なお、医療機関との相談によっては、学校職員が医療機関へ直接赴き、情報提供書を提出する場合もあります。
情報提供書には個人情報が含まれるため、電子メール等による送受信は避けることが望ましいでしょう。

2 書き方(様式ダウンロード)
ここでは、次の様式をもとに、情報提供書の書き方について説明します。

医療機関によっては、指定の様式が定められている場合があります。その際は、医療機関の指定様式を使用してください。
指定様式がない場合は、必要な内容が記載されていれば、様式は問いません。
なお、医療機関が短時間で内容を把握できるよう、A4サイズ1枚程度にまとめることを基本とします。
(1)医療機関名
宛先には、「〇〇病院〇〇科」や「〇〇クリニック」などと記載します。
担当医が分かっている場合は、「御担当医」ではなく、医師名を記載します。
敬称は、「先生御侍史(ごじし)」または「先生御机下(ごきか)」とするのが一般的です。
(2)本人が困っていること
児童生徒本人が、最も困っていること、相談したいことを記載します。
例えば、
- 朝、頭痛や吐き気があり、登校できない
- 他者の視線が怖くて、教室に入れない
- 気分の落ち込みや意欲の低下が続き、死にたい気持ちになる
基本的には、本人の言葉を尊重し、本人の表現に近い形で簡潔にまとめます。
(3)学校での様子
学習面、生活面、対人関係などについて、5W1Hを意識しながら具体的に記載します。
文体は、「である調」ではなく、「です・ます調」で統一します。
① 事実を伝える
評価や印象ではなく、「いつ、何があったのか」という客観的な事実を記載します。
例えば、
- 〇月〇日、本人から「消えてしまいたい」という発言がありました。
- ここ2週間ほどは、30分以上手洗いを続ける様子がみられています。
- 〇月〇日にスクールカウンセラー(以下、SC)との面接を実施し…
- 〇月〇日昼休みに、女子トイレの個室内でリストカットし…
- 欠席日数:1年次〇日、2年次〇日
本人の状態が分かるよう、時系列で整理すると伝わりやすくなります。
必要に応じて、本人の発言を「 」でそのまま記載することも有効です。
② 受診までの経緯を伝える
どのような経緯で医療受診につながったのかを記載します。
本人や保護者がどのような思いで受診を希望したのかは、診療の参考となる重要な情報です。
③ 本人の強みも伝える
困りごとだけでなく、本人の得意なことや強みも記載します。
例えば、
- 学習意欲が高く、興味のある分野では高い集中力を発揮します
- 体を動かすことが好きで、散歩が気分転換になると話しています
本人の強みを共有することは、支援方法を検討するうえでも役立ちます。
④ 診断名を推測しない
教職員が診断名を推測して記載することは避けます。
例えば、
- ADHDの可能性があります
- うつ病の症状が出ています
と記載するのではなく、そのように感じた具体的な出来事や行動を記載します。

(4)これまでの支援
学校がこれまで行ってきた支援や対応、その結果を記載します。
例えば、
- 〇月中旬から別教室でオンライン授業を受けています
- 本人の希望に応じて、教室の一番後ろの席へ変更しました
- 〇月以降、スクールソーシャルワーカーとの面接を継続しています
支援内容だけでなく、その後の変化や本人の反応も記載すると、より参考になります。
(5)学校が相談したいこと
学校から主治医へ相談したいことがある場合は、できるだけ具体的に記載します。
ただし、「医療で何とかしてほしい」「学校での対応をすべて指示してほしい」といった相談は、
連携や協働の趣旨とは異なるため、避けることが望ましいでしょう。
例えば、
- 〇〇について、学校として配慮すべきことがありましたらご教示願います
- 本人の心身の安全を守るために、学校で配慮すべき点をご指導いただければ幸いです
このように質問することは、学校が連携を大切にしている姿勢を伝えることにもつながります。
(6)保護者同意欄
児童生徒や保護者が情報提供書を医療機関へ直接持参する場合は、保護者同意欄は必須ではありません。
ただし、その場合であっても、本人・保護者から内容を確認してもらい、情報提供について同意を得ることが必要です。

情報提供書は、本人・保護者が内容を確認することを前提として作成します。
そのため、本人を否定的に評価する表現や、誤解を招くおそれのある記載は避け、客観的な事実を分かりやすく伝えることを心がけましょう。
<様式ダウンロード>
本コラムの内容に沿った「情報提供書の様式」です。
必要に応じてダウンロードのうえ、ご活用ください。
\ わかりやすい「記録の書き方」/
↓ ↓ ↓

3 個人情報の取扱い
診断名や調剤などの情報は、通常、「要配慮個人情報」に該当します。
要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように、その取扱いに特に配慮を要する個人情報のことです。
学校は、このことを十分に理解したうえで、条例や取扱要綱等に基づき、適切に情報を管理する必要があります。
例えば、本人や保護者の同意なく、診断名や治療に関する情報を他の児童生徒や保護者へ伝えることがないよう、十分注意しなければなりません。
一方で、学校として必要な対応・支援を行うためには、医療機関からの助言や配慮事項を、教職員の間で共有することも重要です。
その際には、情報共有の目的を明確にし、支援に関わる教職員に限定するなど、適切な管理のもとで取り扱うことが求められます。
また、本人・保護者に対しては、児童生徒への支援に必要な範囲で教職員が情報を共有することについて、
あらかじめ説明し、理解を得ておくことが望ましいでしょう。

まとめ
- 情報提供書は、学校での様子や支援の経過を医療機関へ伝え、児童生徒が適切な支援を受けるための連携ツールです
- 作成する際は、「いつ、何があったのか」「どのように支援してきたのか」「何を相談したいのか」を具体的に記載することが大切です
- 本人・保護者の理解と同意を前提として、学校と医療機関が連携して児童生徒の支援につなげていくことが重要です
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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