学校には、とても自然に児童生徒をほめる先生がいます。
その姿は、特別な技術を使っているというよりも、呼吸をするように自然です。
「上手なほめ方」のテクニックは数多く紹介されていますが、本当に大切なのは、その前提となる姿勢なのかもしれません。
このコラムでは、ほめ上手な先生に共通する基本姿勢について整理していきます。
このコラムは約3分で読めます。
1 信ぴょう性を意識する
皆さんはテレビの食リポを見て、
「本当においしいのかな?」
と疑問に感じたことはありませんか。
例えば、
- どの料理も「おいしい」と言い、例外がない(忖度しているように見える)
- どの料理でも同じような表現を使う(ビジネス的な反応に見える)
- 表情が「おいしい」という言葉と一致していない(言葉と表情の不一致)
- 次の一口に進まない(言葉と行動の不一致)
- リアクションが過度に誇張されている(自然な反応に見えにくい)
このような様子は、視聴者にすぐ見抜かれてしまいます。
ほめるときに大切なのは、「言葉」そのものよりも、そこに込められた信ぴょう性です。
これは、教師が児童生徒をほめる場面でも同じです。
- 誰に対しても同じような言葉でほめる
- 何でもないことなのに大げさにほめる
- 「すごい」「えらい」など、ありきたりの言葉だけを使う
- ほめているのに、笑顔や驚きの表情がない
- ほめるだけで、それ以上を知ろうとしない
- 作り込まれたような不自然な言い方をする
児童生徒は、教師の言葉だけでなく、表情・声の調子・態度までよく見ています。
そのため、信ぴょう性の低いほめ方は、かえって
「本心で言っていないのではないか」という小さな不信感につながってしまうこともあります。
では、信ぴょう性の高いほめ方とは、どのようなものでしょうか。
① 具体性がある
先生授業で積極的に発言できているね
このように、何がよかったのかを具体的に伝えると、本心から言われているように感じられます。
② 感情が伝わる
先生感動したよ!とってもよかった!!
笑顔やうれしそうな声など、先生の感情がそのまま表れるほめ方は、信ぴょう性を高めます。
③ 驚きがある
先生えっ、どうやって思いついたの!?
このように、素直な驚きを伝えるだけでも、児童生徒は十分に「認められた」と感じるものです。
信ぴょう性を高める要素には、ほかにも次のようなものがあります。
- 第三者から間接的に伝わる
例:「〇〇先生が、〜と言っていたよ」 - 本人がいない場でもほめられる
- 複数の先生から同じことをほめられる
- 専門の先生から認められる
例:国語の先生から文章力をほめられる - あまりほめない先生からほめられる
ほめる技術としては、「語彙力を高める」「非言語表現を豊かにする」「感情を素直に表現する」といった工夫が大切です。
ただ、その前提となるのは、
心から感動できる先生であること
児童生徒の小さな変化に気づき、心から感動すること。
それこそが、ほめ上手へのいちばんの近道だと思います。

2 相手への関心を伝える
児童生徒が「うれしい」と感じるほめ方には、ある共通点があります。
それは、先生から「関心を向けてもらっている」と感じられることです。
例えば、次の二つの言葉を比較してみてください。
A:「発表するのが上手だね」
B:「発表が上手になったね。前よりも声が大きくなって、自信をもった感じがするよ。」
多くの人は、Bの方が「先生がしっかり見てくれている」と感じるのではないでしょうか。
Aは、児童生徒のことをあまり知らなくても、その場の様子だけで伝えることができます。
一方、Bの言葉からは、
- 以前の姿を覚えている
- 内面の変化を想像している
- 成長に気づいている
ということが伝わってきます。
つまり、「ほめる」という行為そのもの以上に、
「先生は自分のことをよく見てくれている」
という実感が、うれしさを生み出しているのです。
学校現場では、愛情の対義語は「無関心」と言われることがあります。
ほめる場面でも同じで、先生の関心が伝わることが大切になります。
① 過程を見ている
先生毎日よく取り組んでいるね
先生誰も見ていないところで、実はよく練習しているよね
このように、結果だけでなく努力の過程を見ていることが伝わると、先生の関心はより強く感じられます。
② プラス・マイナスの両面を伝える
先生〇〇はまだ慣れていないけど、〇〇は良くなっているよ
先生〇〇は良かったよ。〇〇を意識すると、もっと良くなるね
関心をもって見ていなければ、このように整理して伝えることはできません。
③ 小さな変化に気づく
先生先週より集中して取り組んでいるね
このような小さな変化に気づくことができるのは、日頃から関心をもって見ているからこそです。
ほめるのが上手な先生は、
特別な言葉や高度なテクニックをたくさん知っているわけではありません。
むしろ、共通しているのは、
よく見て、よく聞いて、よく覚えている
良いほめ方は、良い観察から生まれます。
言い換えれば、インプットが丁寧だからこそ、アウトプットも自然と豊かになるのです。

3 ほめてほしいことをほめる
教育現場では、先生のほめる回数を増やすために、
「できて当たり前だと思うことでもほめる」
という言葉を耳にすることがあります。
ここで大切なのは、この言葉の意味です。
これは、先生にとっての「当たり前」の基準を少し下げ、積極的にほめようという考え方を指しています。
一方で注意したいのは、
児童生徒にとっての当たり前を
むやみにほめない
例えば、
「この計算、よくできたね」
「宿題をちゃんとやってきたね」
「休まずに登校できているね」
もしそれが、その児童生徒にとって当たり前でない場合、本人はうれしい気持ちになるでしょう。
しかし、その児童生徒にとって当たり前のことだった場合、バカにされたように感じてしまうかもしれません。
ほめるときに重要なのは、
- 本人が気に入っているところ
- 自分でも「よくできた」と感じているところ
- 本人が手応えを感じているところ
つまり、「本人がほめてほしいと思っていること」をほめることです。
では、それはどのように見つければよいのでしょうか。
① 話を聴き、本人の思いを知る
先生描いていて、どこにこだわったの?
児童生徒花の色をきれいに塗りました
先生本当だね!きれいに塗れている。
特にこの黄色、すてきだよ!
このように、児童生徒ががんばったところを聴き、そのポイントをほめることで、本人は自分の努力を理解してもらえたと感じます。
② 努力したところを見る
例えば、負けず嫌いな児童生徒が謝ることができたとき
先生素直に謝ることができたね。がんばったね!
その児童生徒にとって難しいことに挑戦したとき、それを大きな成長として認めます。
③ 悩みや価値観を理解する
例えば、不安の強い児童生徒が人前で発表したとき
先生勇気を出してがんばったね。とてもよい発表だったよ!
その児童生徒の不安を理解しているからこそ、この場面では「勇気を出したこと」を認めます。
つまり、ほめ上手な先生に共通しているのは、
児童生徒を深く理解している
同じ発表を聞いたとしても、
「勇気」「工夫」「内容」など、ほめるポイントは児童生徒によって異なります。

また、少し異なるアプローチとして、
児童生徒自身もまだ気づいていない価値に光を当てる
というかかわり方もあります。
例えば、
「あなたがいると、クラスの雰囲気が明るくなるよ」
「あのプレーで、ゲームの流れが変わったよ」
「元気なあいさつだね!聞いた人も元気になるよ」
「あなたがいてくれてよかった」
「あなたには安心して任せられる」
このように、「貢献を伝える」「価値を伝える」「存在を肯定する」といったかかわりは、
児童生徒にとって思いがけない角度からのほめ言葉となります。
そのため、心に強く残り、大きな自信につながることも少なくありません。

まとめ
- ほめることは、特別な技術ではありません。ほめるときに大切なのは、「信ぴょう性」「関心」「本人基準」という三つの視点です。
- そして、その土台にあるのは、「児童生徒に関心をもち、成長を丁寧に見つめ、素直に感動する姿勢」です。
- まずは児童生徒を少しだけ丁寧に観察してみること。そこから、ほめ上手な先生への第一歩が始まるのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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