【ソクラテス式質問法】相手の思考を深め「気づき」に導くガイデッド・ディスカバリー

哲学者の名前が付いているため、難しそうな印象を受けるかもしれません。

しかし、決してそのようなことはありません。

授業での問いや作文のテーマづくりに通じるものであり、学校の先生方にとっては、むしろ親しみやすい技法だと思います

このコラムでは、児童生徒との個別面談で活用できる具体的な問いと、そのポイントを紹介します。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 ソクラテス式質問法とは

認知行動療法において、カテゴリー化されている質問技法の一つです。

質問の内容自体は、認知行動療法に限らず、多くのカウンセラーが活用しています。

定義が複雑なため、わかりやすく表現すると、

探究的な
オープン・クエスチョン

例えば、

例1「今、あなたが話した『うまく』とは、具体的にはどういうことですか?」

例2「今抱えている悩みの中で、優先順位が最も高いものはどれですか?」

例3「この経験は、あなたにとってどのような意味がありますか?」

このように、相手と一緒に、好奇心をもって深く考え、整理・分析していく点に特徴があります。

ひと言では答えにくいため、オープン・クエスチョンに分類されますが、

話題や焦点を絞っている点から、

クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンの中間に位置づける研究者もいます。

特徴は、

具体的に考えることを促せる

抽象的な言葉を具体化することで、思考の解像度を高めます。

異なる角度から考えることを促せる

根拠を確かめたり、比較したりすることで、新たな気づきが生まれます。

焦点を絞って話を深められる

特定のテーマに絞った問いによって、対話を深めることができます。

この技法は、古代ギリシアの哲学者ソクラテスが、質問を重ねながら相手を真理に導いたことをモデルに、

認知行動療法では「ソクラテス式質問法(問答)」と呼ばれています。

また、質問によって相手を発見へと導くという意味から、

ガイデッド・ディスカバリー(Guided Discovery)」とも呼ばれています。

2 ソクラテス式質問法の具体例

学校現場で先生方が活用しやすい例を、いくつか紹介します。

(1)具体化する

曖昧な表現漠然とした思いについて、具体的に語ってもらう質問です。

児童生徒

私は、もっとメンタルが強い人になりたいです

先生

変わりたいと思っているんだね

児童生徒

はい!

先生

〇〇さんにとっての「メンタルが強い人」って
どういう人なの?

この質問によって、児童生徒は自分が求めている姿を具体的に説明しようとします。

すぐには言葉にできない場合もありますが、その過程で「自分が本当に求めているものは何か」を深く考えることができます

パターンとしては、

「〇〇って、具体的にはどういうことですか?」

(2)順位づけする

複数の内容を並び替えてもらい、優先度などを整理する質問です。

児童生徒

いろいろうまくいかなくて…

先生

苦しいね…
学習、家族関係、友だち関係の三つの
悩みを聴いたけど、これで合っている?

児童生徒

はい、そうです

先生

困っている順に並べると、どういう順番になりますか?

この質問によって、児童生徒は悩みの大きさを比較します。

その過程で重要度や優先度を整理し、自分の状況を客観的に見つめ直すことができます

パターンとしては、

「〇〇で並べると、どのような順番になりますか?」

(3)証拠を確認する

その考えに至った証拠や根拠について、丁寧にたずねる質問です。

児童生徒

私がいないときのほうが、
みんな盛り上がって楽しそうで

先生

そう見えるのね

児童生徒

嫌われていると思います

先生

そう思うと、つらいよね…
「嫌われている」とまで考えたのは、どのようなことからそう思ったの?

この質問によって、児童生徒は自分の考えの証拠を探し始めます。

もし証拠が曖昧であれば、「もしかしたら考えが少し飛躍していたかもしれない」と気づくきっかけになります。

ここでのポイントは、「証拠」や「根拠」という言葉をそのまま使わず、柔らかく尋ねることです。

パターンとしては、

「どのようなことから、そう思ったのですか?」

問い詰めるのではなく、「一緒に確かめる」姿勢が大切です。

(4)比較する

相違点や類似点に目を向けてもらう質問です。

児童生徒

今回は緊張しないで、発表することができました

先生

よかったね〜

児童生徒

ありがとうございます

先生

以前のあなたと、今のあなたは、何が違っていると思う?

この質問によって、児童生徒は過去の自分と現在の自分を比較します。

その過程で、自分の成長や工夫に気づき、漠然としていた学びを具体的に捉え直すことができます

パターンとしては、

「以前の〇〇と今の〇〇では、何が違っていると思う?」

(5)友だちを仮定する

別名「フレンド・クエスチョン」とも呼ばれます。

他者へのまなざしを通して、自分へのまなざしを柔らかくする質問です。

児童生徒

うまくできない自分が嫌なんです

先生

うまくできなければならない

児童生徒

はい

先生

もしあなたの友だちが同じことで悩んでいたら
あなたはその友だちに何と言ってあげるかな?

この質問によって、自分の考えの妥当性やバランスについて検討することを促せます。

特に、「ねばならない」「べき」という思考が強い場合、

自分の考えが偏っていたことに、気づくきっかけになることがあります。

パターンとしては、

「あなたの友だちが同じことで悩んでいたら、何とアドバイスしますか?」

(6)価値を問う

思考や行動の背景にある意味や価値観に目を向ける質問です。

児童生徒

周りの人に嫌われたくないから、一緒に笑っています

先生

それで…

児童生徒

本当はおもしろくないのに、周りに合わせてばかりで…
そんな自分が嫌なんです
でも、やっぱり嫌われたくない

先生

周りの人から嫌われずにいることは、
〇〇さんにとって、どんな意味があるのかな?

この質問は、思考や行動の奥にある理由や、大切にしているものを探るものです。

児童生徒は、自分が何を重視しているのか(価値観や信念)に気づくことができるかもしれません。

パターンとしては、

「それは〇〇さんにとって、どんな価値がありますか?」

3 ソクラテス式質問法の注意点

平たく言えば、ソクラテス式質問法には「圧が強くなりやすい」という側面があります。

日常の会話で、

「今、あなたが話した『うまくいく』って、具体的にどういう状態ですか?」

と尋ねることは、あまりありません。

場合によっては、相手から「そんなに細かく聞かないで」と嫌がれてしまうかもしれません。

この質問法は、使い方を誤ると相手を防衛的にさせやすく

無意識のうちに上下関係をつくってしまう可能性があります。

それを防ぐために、次の点に注意することが大切です。

協働関係があるときに使う

協働関係があるとき、

ソクラテス式質問法は「協力者からの問い」になります。

協働関係がないとき、

ソクラテス式質問法は「偉そうな先生からの問い」になってしまいます。

まずは、児童生徒の気持ちを理解することに集中することが大切です。

良好な関係が築けているときの一つのサインは、

児童生徒から自然と出てくる

「そうなんです!」

「そうそう!」

といった、感情のこもった反応です。

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訊いたら、どのような答えでも聴く

これは、すべての質問に共通する鉄則です。

質問によって言葉を引き出したなら、その言葉を丁寧に受け止める必要があります

質問を重ねすぎたり、

こちらの期待と違う答えを否定したりすると、

相手は「責められている」と感じてしまいます。

効果的なのは、共感をはさんでから質問することです。

例えば、

「そう考えると、つらいよね。どんなことがあって、そう思ったのかな?」

このように共感の言葉を添えるだけで、問いの印象は大きく変わります。

答えにくさを想定しておく

ソクラテス式質問法は、

相手がまだ十分に言語化していないことを問いかける方法です。

だからこそ、効果があります。

しかし、それは同時に、すぐには答えられないことも多いということになります。

沈黙が生まれたときには、

  • 答えが難しい理由を想像する
  • 考えてくれたことに感謝を伝える
  • もう少し答えやすい質問に変える

といった対応が必要になります。

ここで大切なのは、次の二つのバランスです。

  • 「相手は自分で気づきを得ることができる」と信じる気持ち
  • 「難しいことを尋ねている」という配慮

この両方がそろったとき、問いは一方的なものではなく、協働作業になります

まとめ

  • ソクラテス式質問法は、探究的なオープン・クエスチョンです。
  • 具体化したり、比較したり、意味や価値を問い直したりすることで、相手が気づきを得るきっかけをつくることができます
  • 使い方によっては、「圧」になりやすい側面もあるため、相手との協働関係を重視し、共感的なかかわりを意識する必要があります

関連書籍のご案内
クライエントの言葉をひきだす認知療法の「問う力」ーソクラテス的手法を使いこなす 金剛出版 東京駒場CBT研究会,石垣琢麿,山本貢司
ケアする人の対話スキルABCD 日本看護協会出版会 堀越勝

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